遥か彼方のいつかに出逢い、遥か彼方のいつかを目指す。
神と人とが共に暮らしていた時代、
処罰を背負い、天土の都へ追放された神輿師がいた
その男・ミコトは神輿師。神様の乗り物を創る人様、神職の座に就く者。時はいつとも知れぬ、神無月を目前に控えた十五夜。ミコトは神様の神輿の最終調整に余念がない。そして、十五夜の月が沈む寸前、いよいよ最後の木槌ひと打ちのみを残すのみ。その瞬間、ミコトの心に安心感が漂い、決して開けてはならぬと言われていた天の岩戸のトビラを開けてしまう。待っていたのは、神職の座からの追放という処罰。
タカマガハラ、天土の都、黄泉の国……
世界を超えて、交錯するさまざまな思い
そして時は流れ――。何度かの生まれ変わりを繰り返した後、再びミコトと名づけられた少年が死に瀕する中、死神(女)と出会い、死神(女)の口車と、朽ち果てた“いつかの輿”に乗り、はるか彼方のいつかを目指す時間旅行へ。それこそ自らの運命と宿命を辿る道行きであった。
一方、ミコトと永の年月を共に生きてきたツウコは真白の部屋に監禁されていた。そこに現れた死神(男)。真白の部屋からの逃避行、それは失楽園を目指す道行き。やがてツウコは死神(男)の心を受けようと心を決める。しかし、何かが違う、何か違和感がある。
その違和感の正体は――。“夕鶴”と呼ばれる話。その顛末を少年・ミコトは死神(女)と共に見る。それは、神職の座を追われた後、天土の都へ追いやられたミコトとツウコのいつかの話だった。それは決して天土の都に流布しない物語。それこそが神様の真実の物語。
溢れ出る思い、交わる宿命と運命、
果たして恋物語の行く末は……!?
ツウコと死神(男)は共に暮らすことを夢見、神様が隠し続けてきた物語を材料に黄泉返りという取引を望む。けれど、神々を統べるオオミカミ・アマテラスの手にかかり死神(男)は瀕死の重傷を負う。逃げ延びた先は黄泉の国。そこで死神(男)はツウコの心へ訴えかける。しかし――ツウコは死神(男)の心を受け入れることができない。死神(男)は神々の物語を手に黄泉の国にて、死人の群れを率いての反乱を企てる。
スサ・タケル・ウズメの三人の神々が、ミコトに死人の大群の平定を頼みにやってくる。
その時、ミコトとツウコがついに出逢う。互いの心に、あの時の思いが黄泉返ってくる。必死で、心を抑えようとするツウコだが、しかし、衝動的にミコトへの思いが募ってしまうのだ。ツウコは思わず呟く。「勝って……」。その言葉を聞き、ミコトは神々の軍勢への参戦を決意する。神々を率い、ミコトが叫ぶ。「我が神輿の担ぎ手となった神々よ、ときの声をあげよ!」「「わっしょい!」
遥か彼方の輪廻を超えて、
再び巡り合うふたつの思い
クサナギのツルギとアメツチのツルギを持ち、死神(男)が率いる死人の軍勢に立ち向かうミコトと神々。死人の群れを神々が迎え、ミコトは死神(男)と対峙する。
隠されていた互いの本心。そして死神の出生の秘密。女2人をも巻き込んで、魂と魂がぶつかり合う。そして、死神(男)にとどめを刺そうとミコトがツルギを振り上げた瞬間! 死神(女)の持つ鎌が死神(男)の身体に深々と突き刺さる――。
本当に人を愛するとは何か、結ばれるとはどういうことか。人が生きていくための“居場所”とは何なのか!? 連綿と連なる背中合わせの生と死を絡めながら描かれる壮大なラブストーリー。